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ユカ

Author:ユカ

アタシ、松本由香。 生まれた時から、非凡な人生を歩む運命だったんだと思うな。 ユカの人生をすべて知ってる人は誰もいないし、 墓場まで持っていこうと思ってたけど、 誰かに知っておいてほしくなっちゃって。 『オトコの履歴書』と題して、ユカの人生公開します。

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2008/02/19  油断


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翌日、工場に来た加藤さんが2Fの事務所に上がってきた。

事務所にはアタシ一人だった。

『昨日はごちそうサマでした。昨日の返事、今していいかなぁ?。』

『えっ?。今?。』

『こんなアタシでよければ、お付き合いさせて下さい。』

『・・・・』

『加藤さん?。』

『鈴木さん、僕にだって心の準備が・・・。あー、びっくりした。でも嬉しいよ。こちらこそよろしく。』

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この瞬間から、コウジとユカの付き合いは始まった。

会社では二人の付き合いは当分内緒に・・・と決めたが、UFOキャッチャー絡みで二人でする仕事が多く、しょっちゅう一緒だった。

コウジの迅速な仕事ぶりや的確な判断など、頼もしく思え、ユカは毎日出勤するのが楽しかった。


コウジと居るとラクだった。

ユカのわがままを聞き入れてくれ、甘えさせてくれ、でも、間違ったトコロは正してくれる。

でもアタシは、コウジの前でオンナになろうとは思えなかった。

トシちゃんと会う時は、何度も鏡を見て化粧のチェックをしたり、髪が少しハネているのも気になったが、コウジの前ではそーいう気持ちにはなれず、恋人というより、お兄さんみたいな存在だった。

そーいう恋もあるのかな?。コレが愛に変わっていくのかな?・・・。

SEXすれば、関係も深まるかもしれない。そう思ったが、さすがにユカから誘うコトはできず、3週間が過ぎた。


週1~2回、仕事帰りに駅前の居酒屋で会うというのが手っ取り早いデートだったので、ソレを続けていたが、ある日コウジが

『ユカはソレでいいの?。』と聞いてきた。

『えっ?。』

『フツウ、女の子っていうのは、もっとおしゃれなお店に行きたいとか、おいしいモノが食べたいとかって言うんじゃないの?。』

『ソレはコウジの前の彼女のコト?。アタシはコウジと一緒なら、公園でコーヒーでもかまわないよ。


またウソが1つ増えた・・・。

おいしいモノは高田さんと食べに行っている。だから、返って居酒屋の方が気が休まる。

それに、梅田やみなみに出ると、高田さんやトシちゃんに遭遇する可能性もある。

だから、会社の近所の居酒屋でいいのだ・・・。

『でも、コウジが居酒屋ばっかじゃイヤなんなら、他のお店に行く?。』

『うん。やっぱり、ユカをいろんなトコロに連れていきたいし、今度は梅田まで足を伸ばそうよ。』

『わかった。じゃ、楽しみにしとくね。』

『なんか食べたいモンある?。』

『コウジが食べたいモンでいいよ。』

『ユカはやさしいなぁ。』

やさしいんじゃなくて、興味がないだけ・・・。

たいがいの料理は、高田さんと堪能している。

ごめんね、コウジ・・・。


コウジがセレクトしたのは、お寿司屋だった。

前の会社時代に接待でよく使ったお店らしい。

『いらっしゃい。加藤さんお久しぶりで。おっ、今日はプライベートですか?。』

ユカをチラッと見た大将が言った。

『うん。会社変わって・・・。もう接待はないよ。
仕事の話しながらじゃ、ネタの美味しさも味わえなかったけど、今日は存分に食べさせてもらうよ。』


『それはありがとうございます。で、何からいきましょ?。』

コウジが好きなモノを頼んでいいと言った。

ユカは、店内の水槽を泳ぐ魚を見てから、かわはぎのお造りを頼んだ。

『おっ、しぶいトコからいくねぇ。さてはいいトコのお嬢さん?。』

『ち、違いますよ。加藤さんと同じ会社の工場で働くしがないOLですぅ。』

油断していた。

高田さんと一緒にお寿司屋に行った時は、何気に水槽を見て注文していたが、その時もユカが頼むのは高価な魚ばかりで、高田さんに

『贅沢な頼み方するようになったなぁ。』

と言われていた。

習慣というモノは怖い・・・。

『かわはぎが大好きなんで・・・。それと、あとはお寿司お任せで握ってください。なんでも食べれます。』

無難にそう言った。

お寿司を食べながら、ダメ押しのフォローで

『やっぱり、回るお寿司とは全然違うよっ。おいしー。』

と加藤さんにはしゃぎながら言った。

回転寿司なんて行ったコトのなかったユカだったが・・・。
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